肺炎とは、肺の内部に何らかの病原性微生物が肺に侵入したことで起きる急性の炎症です。そもそも、肺とは呼吸によって血液に酸素を取り入れる臓器であり、肺炎により呼吸に障害が出ることが一般的です。風邪とは一般的に異なるものですが、肺炎は風邪やインフルエンザなどのウイルス感染に引き続いて発症することも多いのです。
肺炎は高齢化の進行に伴い、日本人の死因の第3位になっています。高齢になると肺炎にかかりやすく、重症化しやすく、今や肺炎で亡くなる人の95%以上が65歳以上の高齢者です。
肺炎の原因のほとんどは細菌です。様々な細菌が肺炎を引き起こし、多いのが「肺炎球菌」「インフルエンザ菌」という細菌です。鼻や口の中には様々な常在菌が存在しており、常に気道や肺はそれら細菌を吸い込もうとします。それらは空気からであったり、「誤嚥」によって、直接気管や肺に侵入します。
誤嚥とは、食道の隣にある気管に、間違って食物や唾液が流れ込んでしまうことです。私たちの体にはもともと誤嚥を防ぐ機構が備わっていて、気管に異物が入った時にせきをして取り除く「せき反射」や、のどに食べ物や唾液がきた時に、のどの喉頭蓋という部分が気官に“蓋”をして、食道の方に入るようにする「飲み込み反射(嚥下反射)」です。これらの働きが低下すると誤嚥が生じやすくなります。
嚥下反射・咳反射が低下している場合には、誤嚥が起こっても、自分も周りも気づかないことがあります。
このような誤嚥による肺炎を誤嚥性肺炎と呼びます。
肺炎では、せき、たん、発熱、呼吸困難、息を吸い込んだときの胸痛、動悸、悪寒(おかん)・ふるえなどの症状がみられます。特に37~38°C以上の発熱、1分間に24回以上の呼吸(頻呼吸)、1分間に100回以上の心拍数(頻脈)があれば肺炎の可能性が高いとされています。
かぜでも似た症状がみられますが、かぜは通常数日で軽くなる病気です。1週間以上、せきや発熱が続く、息が苦しい、吸気時に胸が痛いなどの症状があれば肺炎を疑うことが大切です。
しかし、高齢者では、こうした典型的な症状が出にくいことがあります。肺炎とは考えにくい症状だけが出る場合もあります。自分や家族がいつもと違うなと感じたら、医療機関を受診してください。
診断には胸部X線(レントゲン)検査やCT検査で、撮影した画像で肺に浸潤影と呼ばれる影が認められれば肺炎と診断されます。
肺炎には原則として抗菌薬の投与による治療が主となります。
健康な若い人の軽症の肺炎であれば通院で治療が可能な場合もありますが、基本的に肺炎の場合は入院治療となります。
特に誤嚥が関係している肺炎の場合は、肺炎を繰り返さないために、原則として絶飲・絶食する治療も必要です。
肺炎の治療では抗菌薬を含めた総合的な対応が必要となります。
肺炎は、常日頃からしかるべき予防策を講じていれば、ある程度予防することができます。
その予防法は手洗い、うがい、歯磨き、禁煙、規則正しい生活です。
肺炎予防の第一歩は、感染予防です。そのためにまず、うがい、手洗い、マスクの着用をしっかり行いましょう。また、歯磨きなどで口の中を清潔にすることも肺炎予防では重要です。 誤嚥が起こった時に口腔内の常在菌を歯磨きでしっかり減らせていれば、肺炎のリスクも低下すると言われています。高齢者の肺炎を防ぐ方法として、「成人用肺炎球菌ワクチン」の接種があります。またインフルエンザをきっかけに肺炎にかかる人も多いことから、インフルエンザのワクチン接種も肺炎予防には大切です。 たばこは免疫力を低下させ、気管や肺にも悪い影響を及ぼします。禁煙することを考えましょう。
規則正しい生活(バランスの良い食事、十分な睡眠、適度な運動)によって免疫力を高めることができると言われています。こちらは肺炎だけでなく、様々な病気に対して有効なので、十分に心がけてください。