そけいヘルニアとは、腹膜や腸の一部が、そけい部の筋膜の間などから皮膚の下に出てくる病気です。一般に脱腸(だっちょう)とも呼ばれています。「そけい部」とは、鼠径部(太ももの付け根の部分)のことをいい、「ヘルニア」とは、体の組織が正しい位置からはみ出した状態をいいます。
そけいヘルニアは乳幼児から高齢者まで幅広く起こりうる病気です。乳幼児の場合は先天的な要因がほとんどですが、成人の場合は身体の組織が弱くなることが主な要因とされます。
中年以上の男性に多く見られ、立ち仕事をしている人や便秘症・肥満気味の人が多いとされています。
そけいヘルニアの症状には、「ヘルニア状態」と「嵌頓(かんとん)状態」があります。
おなかに力をいれた時や立ち上がった時に、足のつけ根のところに柔らかいふくらみが「できもの」のように出てきます。膨らみは寝たり、手で押さえると引っ込めることができる段階では、特に痛みは感じません。
違和感を感じるようになると「これはそけいヘルニアかも」と気づくかも知れません。症状が出てくると、痛みなどで生活に支障が出てきてしまうので、ストレスにもなってしまいます。
ヘルニアで脱出した内容物が、元の位置に戻らなくなった状態になってしまいます。この状態を嵌頓(かんとん)状態といいます。
そけいヘルニアを放置していると、この嵌頓ヘルニアになってしまう危険性(年間1%)があります。腸が嵌頓してしまうと、腸の中を食べ物が流れていかなくなってしまい腸閉塞を起こします。また、しめつけられた腸に血液が流れなくなり、腸の組織が死んでしまい(壊死)、腸内の細菌が腹腔内に漏れだして、腹膜炎に至り、命に関わる場合があります。
ヘルニア嵌頓は、いつ発生するのか予想できません。確立された予防法もありません。嵌頓が起きた場合には緊急手術が必要になります。腸の壊死があった場合には腸を切除しなくてはならないこともあり、長期の入院治療が必要になります。ヘルニアが戻らない時またはヘルニアの痛みが強い時にはすぐに病院を受診してください。
鼠径ヘルニアを治す薬などはなく、ヘルニアの治療は手術以外にありません。
ヘルニアの手術の方法はいくつかありますが、大きく3つに分けると、自分の組織だけで治す方法、人工のメッシュを使用する方法、腹腔鏡を使って人工のメッシュを当てる方法に分かれます。それぞれの治療法にそれぞれメリットとデメリットが存在しますので、当院では上記の3つのうち患者様に最も適した治療法を提案し、選択していただいております。
どの手術を選択されても、合併症がなければ術後は1~2日で帰ることができます。