腸の中で食べ物や消化液など内容物の流れが、何らかの原因で、止まってしまう状態を腸閉塞・イレウスと言います。腹部の症状でよく見られる急性疾患のひとつです。腸管の内容物の流れが止まると、消化液も再吸収されずに貯まってしまい、腸がふくれてきます。
腹痛、嘔吐、吐き気、便秘、お腹がはるなどの症状が出ます。
原因は多岐にわたりますが、主に物理的な閉塞の腸閉塞と、腸の動きの異常によるイレウスに分けられます。 従来日本では腸閉塞とイレウスは同義の言葉とされてきましたが、近年海外と同様に腸閉塞(obstruction)とイレウス(ileus)を分けて考えられえるようになっています。ここでは従来の機械的イレウスを「腸閉塞」、機能的イレウスを「イレウス」と呼んでおります。
イレウスは、一部あるいは広範囲に、腸管がまひまたはけいれんを起こし、内容物の流れが止まってしまった状態です。局部的な炎症や結石発作による腸管への刺激などがもとで起きます。腸管をコントロールする自律神経のはたらきの異常が原因になることもあります。
最もよくある原因は、腹膜炎や腹部の手術後に起きる癒着(腸とお腹の中の壁や、腸同士がくっつく)がもとで、腸管がねじれたりふさがったりするものです。その他、大腸がんによって、大腸の管腔が狭くなるものや、便が詰まる事で起こる腸閉塞などがあります。
場合によっては閉塞した腸管は血流が悪くなり、腸が腐って(壊死)しまう場合があります。腸が壊死した場合は、腹膜炎に至り命を落とす危険性が高いため、緊急手術が必要となります。
画像診断(超音波やレントゲン、CT)で腸閉塞・イレウスの診断は可能です。
また、血液検査の結果などを合わせて治療方法を決定いたします。
イレウスの場合は絶食や点滴でしばらく腸管を休めることで改善することがあります。また、腸管の張りが強い場合は胃管やイレウスチューブを留置して、腸管の減圧を行うこともあります。
腸閉塞においては原因によって、治療法は異なります。
癒着や糞便によって、腸閉塞が起こっている場合は、イレウスと同様に腸管を休めたり、内容物を減らしたりして、治療を行います。しかし、上記で改善されない場合や緊急性が高い場合には手術治療が第一です。
また、癌が原因で腸閉塞が起こっている場合は原則手術による治療になります。場合によって、閉塞部分にステントと呼ばれる、管腔を広げる道具を留置して、改善を試みる場合もあります。